2008年12月15日月曜日

Lift


存在するだけで、誰かを傷つけることもある。

この事実は、村上春樹の作品だけじゃなくて、数多くの作家がそれぞれの表現で描いている事実だ。今まで信じてこなかったことだけど、今日そのことを痛感している。人は存在するだけで誰かを傷つけてしまうようだ。とはいっても、それは生まれつきのものじゃなくて、それまでの結果の積分でしかないのだけれども。つまり、僕はある特定の誰かにとって、ただの障害物ではなく、傷つける凶器になっているということ。僕の価値はプラスでも0でもなく、マイナスなのかもしれない。

村上春樹の「国境の南、太陽の西」という小説に次のような一説がある。あまりにも僕が言いたかったことを簡潔に述べているので、抜粋したい。

その経験から僕が学んだのは、たったひとつの事実でしかありえなかった。それは、僕という人間が究極的には悪をなし得る人間だったという事実だった。僕は誰かに対して悪をなそうと考えたようなことは一度もなかった。でも動機や思いがどうであれ、僕は必要に応じて身勝手になり、残酷になることができた。僕は本当に大事にしなくてはいけないはずの相手さえも、もっともらしい理由をつけて、とりかえしがつかないくらい決定的に傷つけてしまうことができる人間だった。-講談社文庫 村上春樹著「国境の南、太陽の西」-

最後には相手を傷つけてしまうのなら、最初からひとりでいる方がいいのかもしれない。ひとりで生きることはできない。でもだからといって、簡単に相手のエリアに飛び込み、そして自分のエリアを解放しておくのはとても危険だ。僕は弱いけど、できる限り、ひとりでいれるようにこれから慣れていく必要があるかもしれない。

「Lift」
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